四、怪しい人についていくのはやめましょう

 

 こつこつと鳴る自分の足音と街の喧騒を聞きながら、マナは三歩ほど離れて歩く青年の後姿を眺めていた。
 細身だが高い上背と、奇妙な形で括られた金髪。無邪気な顔で笑いかけてきた反面、身のこなしや雰囲気に全くと言っていいほど隙がなかった。かと言って、害意を持って自分に接近してきたわけではなさそうだ。
 見知らぬ土地で見知らぬ人にほいほいついて行くほど、自分は危機管理ができない人間ではない。優しげで親切そうだが、どことなく怪しい気配をまとったこの青年にも、始終警戒心ははたらいている。
 それなのになぜマナが彼について歩いているのかと言えば、時間は数十分ほど前まで遡ることになる。


「君、もしかして異世界から来たのかい?」
 赤い目を細めて青年が発した問いが的のど真ん中を当てていたので、マナは絶句するよりほかになかった。
 歌唱力には多少の自信があったし、人の集まるところに行けば、運よく仲間と出会えるかもしれないという期待ももって、マナは勇気を出して広場で数曲披露した。結局誰とも会うことはできなかったが、何とか昨晩の宿代には足りそうな金額を集めることはできた。  
 そのことに安堵していたところ、この青年が現れたのだ。拾い損ねた硬貨をわざわざ届けてくれ、次いでマナには理解の及ばない問いが投げられた。歌と、「イレクション」という単語。
 戸惑うマナに対し、青年は先ほどの質問を畳みかけてきたのである。どこか楽しむような表情で。
「………ど、どうして、わかるんですか……?」
 呆然と青年を見上げて、マナはようやく口を開けることができた。
 一目見ただけで、わかるものなのだろか。違う世界の住人かどうかなど。少なくとも、マナには見分ける術は思いつかないし、この青年以外のこの街の人々も、特にマナに対して注意を払ったりはしていなかったはずだ。見分けることができないのか、あるいは異世界からの来訪者など珍しくないのか。
「だって君、『イレクション』が何なのか知らないみたいだから」
 くすりと小さく笑いを零して、青年は答えた。
 答えてはくれたが、その意味はさっぱりわからない。そんなマナの困惑を察知してか、彼は笑顔のまま説明を付け加えてくれた。
「『イレクション』……またの名を『神の選別』。この世界の人々が、神代から血統とともに脈々と受け継いできた、神々の力の断片。言い換えれば、誰にでも備わっている魔術の素質、ってところかな。……君は魔術の心得があるみたいだね。さっきの歌声からは、確かに魔力を感じたよ」
「………はい、そうです」
 答えながら、マナは内心で舌を巻いていた。
 確かに自分の魔術は歌唱を媒介にして発動するものだが、さっきは普通に、ただの歌として歌っていたつもりだったのだ。それでもどうやら魔力は滲み出てしまっていたらしく、この青年は目ざとくそれを見抜いてしまった。
 と言うことは、彼にも魔術の心得があるということである。
「魔術を使えるのに『イレクション』を知らないなんて、ここではおかしいことなんだよ。自分の持つ『イレクション』を自由自在に操作できる人間のことを、この世界では魔術師と呼ぶんだ。誰でも『イレクション』を魔術として顕現させることができるわけじゃないけど、魔術師でない人間も、自身の一部として『イレクション』のことを知っている」
 そう締めくくって、青年はひと際深い笑顔でマナを見た。
 彼の説明は、非常にわかりやすい。
「つまり、この世界の人にとっての常識を知らなかったから、私を異世界の人間だと判断したわけですね」
 何とも間抜けな結論だと思いながら、マナはちょっと居心地が悪くなった。この分と、よほど注意していなければどんなボロを出してしまうかわかったものじゃない。自分はあまりにもこの世界のことについて無知だ。
「まあ、そういうことかな。『イレクション』には色んな種類があってね。歌が『イレクション』だなんて珍しいな、と思って声をかけたんだ。一応俺も、魔術師の端くれだから」
 どうやら青年は純粋に好奇心から自分に近づいてきたらしい。異世界人であることを奇妙がるそぶりも見せず、屈託のない表情を向けてくる彼を見て、マナは何とも言えない複雑な気分を味わいながらも、確かな安堵を覚えてもいた。
 しかし、彼が次に放った言葉は、再びマナを絶句させた。
「それにしても、今日は変な日だな。異世界から来た人に二人も会うなんて」
「……………え?」
 何でもないような、のんびりした調子で彼は言ったが、その内容はけっこうスケールの大きいことなのではないだろうか。普通だったら、異世界の人間に会ったりしたら騒ぎたてたりするだろうに、この青年の感覚が普通とずれているのか、はたまたこの世界では珍しいことではないのか、マナにはわからなかった。
「けど、そうだな……」
 何も反応できないでいるマナの目の前で、青年は不意に思案顔になった。
「……短時間の間に、別々の場所から異世界の人が来るっていうのは、確率や技術的に見てちょっと考えにくいな………。異世界跳躍自体、とんでもなく稀有なことだし……。もしかして、君は誰か他の人と一緒にこの世界へやって来て、途中ではぐれたとか、そんな感じじゃないかい?」
 またしても、彼の言葉は的を得ていた。びっくりしつつも、マナは希望に似たものを見た気がして、深く考えるより早く青年の問いかけに食いついていた。
「そ、そうです! もとの世界にいたとき、私は仲間たちと一緒にいたんです! 状況からいって、他の皆もこちらの世界に来てるんじゃないかと思います。……あなたが会ったという異世界の人は、どんな人でしたか…?」
 青年は始終平静ではあるが、異世界の住人がやって来るという事態そのものは、やはり頻繁に起こることではないらしい。それならば、複数の異世界人が近い場所にいるということは、一度の跳躍で全員が来たと捉えるのが妥当だろう。
 この青年が会ったというもう一人の異世界の人間は、マナの仲間の誰かである可能性が高い。
 胸の前で手を組み合わせて、縋るように真剣な表情を向けてくるマナに、一瞬だけたじろいだ様子を見せてから、青年は答えた。
「茶髪で小柄な子だよ。男か女かは、ちょっとわからなかったけど」
「……メリッサかレオン君、かな……」
 その情報に当てはまる二人の人物の名前を、マナは口の中で唱えた。
「まあ、正確には会ったのは俺じゃなくて、俺の仲間だけどね。俺が見たときは、その子、仲間におぶられて眠ってたから。何でも、その子が道で倒れたときに遭遇して、食事をさせて、その後寝ちゃったらしいんだよね」
 世間話のように続けられた青年のセリフに、マナは盛大に硬直した。
「………………メリッサだ………」
 最早確定した事実に、マナは自分の頭からさーっと血の気が下っていくのを感じた。
 多分、間違いない。年下の師である少女は、恐らくこのとんでもない事態に対処するためにたくさんの魔力を消費し、倒れてしまったのだ。
 たまたま、目の前の青年の仲間という人が通りかかって助けてくれたのは、とてもありがたいことだ。ありがたい、のだが。
「………あ、あの、何というか……。ごめんなさい」
「……え?」
 マナは、仲間の少女がこれまでこういう状態に陥ったときどうなるかということを思い返して、非常に居心地の悪い、申し訳ない気分になった。
 そう、これでもかというほど食い、そして寝るのだ。少しの遠慮もなく。
 咄嗟に深々と頭を下げて、青年に謝罪を口にする。当然だが、青年は当惑した声を上げた。
「その…、多分、貴方の仲間の方が助けて下さったのは、私の仲間で間違いないと思います……。この世界に飛ばされて、たくさん魔力を使ったはずなので、食べるか寝るかして回復する必要があるので、貴方の話した内容とも喰い違っていません。ただ……。その私の仲間は、見た目に反して半端じゃない量を食べるので、多分、お金がとんでもない額になってしまったんじゃないかと………」
 顔は上げたが、目を合わせることはできずに泳がせてしまうマナであった。
 無論、仲間たちがこの世界のお金を持っているはずもない。精魂尽きたメリッサが回復するために取れる道は、無銭飲食か、誰かにたかるか、そのどちらかしかない。どちらも身内として非常に恥ずかしい。
 今回は、たまたま通りかかった青年の仲間が被害をこうむってしまったことになる。きっと放っておくことができずに、善意で助けてくれたのだろう。余計に申し訳ない。
 その意味で、マナは頭を下げたのだった。
 しかし。
「なんだ、そんなこと。気にしなくていいよ」
「……え…?」
 マナの重々しい様子を不思議そうに見ていた青年が、こちらが拍子抜けするほどあっけらかんとした調子で笑った。
「気にしなくて…って……。そうもいきません。親切で助けて頂いたのに、あの子のことだから、きっとそちらの都合もかえりみないで無遠慮に食べまくったに違いないんです……」
「そうだとしても、君が謝ることじゃないよ。どんな相手かも知らないのに勝手に助けたのはこっちなんだから。だからどんな目に合ったとしても、それはその子を助けた俺の仲間の自業自得だよ」
 言い募ろうとしたマナを遮って、青年は清々しささえ感じさせるほどにっこりと笑った。
 そんな人好きのする笑顔で淡白極まりない台詞を口にした青年を、マナは呆然と見上げた。
 もしかしたら、彼はその仲間と仲が悪いのだろうかとも思った。だが、多分そうではない。もしその場にいたのが彼だったら、恐らく放っておいたのだろう。正体のわからない相手に対して、それは賢明で一般的な対処だ。だから彼の一見冷たい物言いは、別段おかしなものではない。
 情に流されたり揺らいだりしない不動心。彼は至って平静だ。平静すぎて、マナはかすかに薄ら寒いものを背筋に感じた。
(……メリッサは、運が良かったんだ……)
 唇を引き結んで、マナは改めてことの深刻さを噛み締めた。
「それで、君はどうするの? もうすぐ約束の時間だから、待ち合わせ場所に行けば、その子も来ると思うけど」
 その言葉に、マナははっと顔を上げた。どこか楽しむような表情の青年と目が合う。
 躊躇したのは一瞬だった。迷う必要はない。選べる道は一つしかないのだから。
「……私を連れて行ってください。お願いします」
「もちろん。あ、俺はキーディン・ベルツ・トーレ。君の名前は?」
 小さく笑いを零しながら答えた青年は、思い出したように名乗り、そして尋ねてきた。そう言えばお互い名前を知らないまま立ち話をしていたと、慌ててマナも答える。
「マナ・フラニガンです」
「マナちゃん、ね。異世界に飛ばされるなんて大変だと思うけど、そんなに深刻に思い悩むことはないと思うよ。来ることができたなら戻る術だってあるだろうし、せっかくの異世界を楽しむくらいの気持ちでいたほうが、気が楽なんじゃないかな」
 先ほどからと同じ、どこか面白がるような軽い調子で、青年は言った。
他人事ともとれる言葉だったが、不思議なことに、嫌な気分にはならない。何となく、青年の真摯な気持ちが伺えたような気がしたのだ。慰めているつもりはないだろうが、気を遣ってくれてはいるようだと、解釈する。
「じゃ、行こうか」
くるりと背中を向けて歩き出した青年に、一拍遅れてマナも足を進めた。
 今は何よりも、仲間と合流することが最優先だ。このとんでもない状況で、これからどうするのか、それはそれから決めればいい。
 ふと、マナは自分の心臓が常より少しだけ騒がしく脈打っていることに気がついた。それはもちろん、現状への不安や緊張からくるものが大きいが、それとは全く別種の、どこかわくわくするような、そんな高鳴りも、わずかだが自覚できたのだ。
 師である少女が、こちらへ来る前に激昂して荒れ狂っていた様を思い出す。その原因が、今自分たちがいる、『異世界』なのだ。
 自分たちがいた世界とは、様々な事象や理が違う世界。先ほどの「イレクション」とやらに関する話からして、確実に、この世界の魔術は自分たちのそれとは基準も定義も違う。
 やはり興味が沸くのだ。師や他の仲間たちも、それは同じだろう。こういうところで、自分も魔術師の端くれなのだな、と、妙にしみじみと感じてしまった。
(楽しむ…、か……)
 青年の先ほどの言葉を、頭の中で呟いてみる。
 師やその相棒あたりは、一段落したら普通に現状を受け入れてこの世界を満喫しそうな予感がある。特に師である少女は、論文のこともあってこの世界の知識を貪欲に吸収していきそうだ。それにつられて、自分も弟弟子も、何だかんだでこの世界に順応してしまうのだろう。
 そしてその予感は、多分外れない。
 マナは青年に気づかれないように、良い意味で諦めの溜息をついた。

◆ ◆ ◆

 自分の数歩後ろをついてくる気配に始終意識は向けたまま、キーディンは内心で苦笑し続けていた。
(異世界、ね……)
 仲間の少年が困ったように負ぶっていた子供と、今自分の後ろを歩いているマナと名乗った少女は、異世界からやってきたのだという。多分、同時に同じ世界から。
 別にキーディンは、昔から提唱されてきた異世界論を否定も肯定していない。存在していても何らおかしいことはないが、それを証明できないのに声高に主張するのも筋が通っていないと考えるからだ。
流石に『イレクション』を知らない人間には驚いたが、何のことはない。『イレクション』が存在しないところの人間なのだと、すんなりと納得できた。
 ただ、キーディンは妙な予感に頭を悩ませていた。
 何か自分たちの意図しない原因があって、マナとその仲間は元いた世界からこちらの世界へやって来てしまったのは間違いないだろうが、その到着した位置がずれているにも関わらず、自分と自分の仲間がそれぞれ出くわしてしまっているというこの状況が、どうも妙な気がするのだ。
 物理的な確率から言って、この遭遇率は偶然ではなく必然、何かの陰謀なのではないかと、職業柄か、あり得ないと考えつつも、様々な仮説を立ててしまう自分がいる。
 こういうときの自分の勘は、幸か不幸か、よく当たるのだ。
(被害者は彼女たちだけど、どうも、俺たちも何かに巻き込まれてるような、そんな感じがするんだよね……)
 そうだとしても、もうどうしようもない。
 先ほど彼女に言った通り、自分もこの状況を楽しむくらいの姿勢でいなければ、やってられないだろう。稀有で、興味深い体験であることは間違いないのだから。


 それからしばらく歩き、街の中心の闘技場正門前に差し掛かったとき、キーディンは今回も自分の予感が外れなかったことに苦笑を隠せなかった。
 仲間との待ち合わせ場所には、既にメフリスと、彼女の肩の上、髪に隠れるように寝そべっているアロイがいた。
 そしてその一人と一匹のすぐそばに、見慣れない青年と少年が一緒に佇んでいる。
「……もしかして、あの二人も君の仲間かい?」
 肩越しに振り返りながら前方を指差して見せると、案の定、マナは目を見開き、すぐにキーディンを追い越してそちらに駆け寄っていった。
「ジオさん! レオン君!」
 長い銀髪を翻して走る姿を、自身はペースを変えずに歩きながら見ていると、呼ばれた二人は驚いた様子で振り返り、次いで同時に破願するのがわかった。
「マナさん!」
「ようマナ、お前も無事だったか」
 それぞれの対応で再会を喜ぶ三人の邪魔にならないように、メフリスたちのほうに近寄れば、彼女はそんな三人の様子に安堵の息を零していた。
「よかった……。もう一人の仲間は、キーディンと一緒にいたのね」
「まあね。まさかメフリスたちも異世界の人たちと遭遇してるとは思わなかったよ」
「本当に、たまたまばらばらに出くわして、こんなに早く合流できるなんて思ってなかったから……。すごい嬉しい偶然ね」
 まるで自分のことのように喜ぶメフリスだったが、キーディンは素直に事態を受け入れられなかった。
「偶然、ね……。本当にそうかな?」
「え?」
 溜息とともに漏らした呟きに、メフリスがきょとんと声を上げた。
 同時に、彼女の肩に乗ったアロイが、くつくつと喉の奥で笑い声を立てる。
「察しがいいな、キーディン」
 意味深に金の双眸が細まったのを見て、キーディンは肩を竦めるより他なかった。
「やっぱり、アロイが元凶か……。まあ、何を企んでいるにせよ、ちゃんと説明はしてよね」
 このテの問題ごとは、大抵この珍獣の姿をした魔術師が引き起こしている。だがまさか、アロイの力が異世界にまで及ぶとは想像もしていなかった。キーディンにとっても、巻き込まれた彼らにとっても、とんでもなく性質の悪い思いつきに変わりはないが。
「……全てが、私の意図したことではない」
「……?」
 不意にアロイが低く呟いて、キーディンは訝しげに片眉を上げた。
 珍しく、殊勝な態度のような気がする。
「不本意とはいえ、あいつらをこの世界へ呼び寄せてしまったのは私だが、別々の場所で奇しくもあいつらとお前たちが個別に出会い、今こうして合流していることには、私は関与した覚えがない」
 殊勝な、と感じたのはどうやら錯覚だったようで、珍獣は普段と同じように飄々と無責任に言い放った。
 やれやれと、キーディンは溜息を零した。
 こうなってしまったら、とことん付き合うしかないということは、これまでの経験上、よく知っている。
 旅は道連れ、縁は異なもの、とは、よく言ったものだ。


 珍獣アロイと少女メフリスの案内で森を抜けたジオとレオンは、そのまま道なりに進んで、大きな街へと入った。
 見たところ、ジオたちがいた世界との大きな分明差はないようだったし、道行く人々が二人を不審がる様子もない。普通にしていれば、誰も自分たちを異世界人だなどと気づくこともないだろう。
 ただ、妙に気になったのは、この街の雰囲気だった。城壁こそないものの、武器を扱う店や武装した人間が多すぎる気がする。かといって戦争中というわけでもなさそうだ。街は活気に満ちているし、人々の表情も明るい。
 気になってメフリスに尋ねてみると、彼女は少し困ったように微笑んでから説明してくれた。
 何でも、ここニドラ大陸では、何百年か前から戦争が絶えないのだそうだ。大陸中のあらゆる国家が、直接的にしろ間接的にしろ、戦争に参加している、と。今ジオたちがいるのはフォルバン公国という国らしく、比較的戦争の被害が少なく安定した国なのだという。
 そんな国にある街が、どうしてこんな風に浮き足立っているのかと聞けば、メフリスは通りの先を指差して見せた。
「あそこの一際大きな建造物は、古い歴史を持つ闘技場で、何年かに一度、大きな武芸大会が催されるんだそうです。有名な大会で、賞金も高額だそうなんで、各地から腕に覚えのある人たちが集まって来るんです」
 数日後が開催日で、街中が一種のお祭り状態なのだという。ついでにその闘技場の正門前で、メフリスの仲間たちと待ち合わせなのだとも。
 陽は大分西に傾いてはいるが(この世界でも太陽は東から西へ動くらしい)、まだ夕方とは言えない時間帯。
闘技場のすぐそばまで来ると、メフリスは、「ちょっと早すぎたかな……」と辺りを見回していた。
「……………。ごめんなさい、もう少し待ってもらえますか」
仲間の姿を探していたのだろうが、見つからなかったようだ。申し訳なさそうに眉を下げて、メフリスはうなだれた。
 ジオたち以上に落胆したような様子のメフリスに、レオンが慌てて声をかけようとした、ちょうどその時。
「ジオさん! レオン君!」
「!」
「!」
 耳に馴染んだ声に名前を呼ばれて、ジオとレオンは同時にそちらへ顔を向けた。
 少し離れた場所からこちらに駆けてくる、銀髪の少女が目に入って、二人は同時に相好を崩した。
「マナさん!」
「ようマナ、お前も無事だったか」
 姉弟子の元気そうな姿に喜びを隠さないレオンの横で、流石のジオも安堵の表情を見せた。順調に仲間が揃っていくのは、何よりだ。
 駆けつけたマナと二言三言交わしながら、ジオはちらりと、マナと一緒に歩いてきた人物に視線を向けた。
 自分よりも上背の高い、金髪の青年だった。余裕を感じさせる、しかしまるで隙のない動作でこちらに歩み寄り、メフリスの隣で立ち止まって、彼女とその肩の上の珍獣と言葉を交わしているようだった。
 どうやらこの青年も珍獣の仲間の一人のようだ。マナは彼に遭遇し、事情を共有してここまで連れてきてもらったらしい。
 再会を喜ぶ相棒の弟子二人に水をさすつもりはないが、どうにもことが上手く運びすぎて怖い気がする。このとんでもない状況下、こうして無事に合流できたことは本当に喜ばしいことではあるが、何か、後でどんでん返しが来るのではないか、と、つい身構えてしまう。

 

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